トレーニング実践編

1:トップレスラーのタックル動作を学ぶ

ポイントを意識して練習しよう

 レスリング競技の基本であり、最も奥が深い技、それが「タックル」です。男女を問わず、日本人トップレスラーの多くがタックルを攻撃の軸としています。実際に、試合でポイントを獲得した技術の統計によると、タックルによって獲得したポイントが3割を超えることが明らかになっています。

 ここでは、2011年の世界チャンピオンである、小原日登美選手と吉田沙保里選手に自身のタックル画像を使って効果的なタックル動作の解説をしていただきます。

 両選手が解説しているポイントを意識して、普段の練習に取り組みましょう。

ポイント 1 前傾姿勢を保つ

ポイント 2 ステップバックせずに前に踏み込む

ポイント 3 ひざ裏をキャッチする

 

小原日登美選手と吉田沙保里選手のタックルデータ

<両選手の獲得ポイント内訳(合算)>

小原選手、吉田選手はタックルで多くのポイントを獲得している!

※2011年世界選手権での小原選手・吉田選手獲得ポイント内訳.(分析:テクニカルグループ:清水聖志人・藤山光太朗)

<タックル成功率の比較>

小原選手、吉田選手はタックル成功率が高い!

※2010年明治乳業杯でのデータ.(清水聖志人・永見智行ほか、コーチング学研究2011より引用改変)

男子メダリストと大学生選手のタックル動作の違い

 右の図は国際大会での技の割合を示しています。さまざまな技の中でタックルが最も多く用いられることがわかります。さらに成功率は、勝者は72%、敗者は38%であったと報告されており、タックルの成功率が競技結果に直結するといっても過言ではありません。

 2010年明治乳業杯での女子トップ選手の映像分析において、世界チャンピオンのタックル動作の特徴は、

  1. 前傾姿勢の維持
  2. 頭頂部の上下動が少ない
  3. 蹴り脚のステップバックが小さいと報告されています。(清水ら、コーチング学研究2011より)

 そこで、男子のオリンピックメダリストと大学生選手のタックル動作の違いを見てみましょう。下の図は、両脚タックル動作の一例をスティックピクチャーで示しています。動作開始0.3 秒後の姿勢を見てみると、メダリストはステップバックが小さく、前傾姿勢を維持していることがわかります。結果として、肩部がより前進(メダリスト:28cm、大学生:21cm)しており、相手の脚を捉えやすくなっていることがわかります。

技の割合

タックル動作の違い

2:ツイストローリング

体幹を中心とした全身のコントロール能力(調整力)を高める

【準備】

仰向けになり、腕を胸の前で組む。両足は膝を曲げて宙に浮かせる。

【 1 】

上半身を右にひねりながら、下半身は左にひねる。

【 2 】

逆方向へ身体をひねる(上半身は左、下半身は右)反動を利用して真横に進む。
【1】【2】を繰り返す。

 

5m × 4セット

3:ワニ歩き

体幹の固定力と股関節の柔軟性を高める

【準備】

床に腹ばいになり、肘を立てて上半身はマットと平行にキープする。片足は膝を曲げて一歩前に。

【 1 】

左手と右足を同時に前方へ移動させる。右足は膝が腰より前にくるように深く曲げる。このとき腰を浮かさない。

【 2 】

右足で床を強く蹴って手と足を入れ替えながら、低い姿勢を保って前方へ進む。
【1】【2】を繰り返す。

 

10m × 4セット

4:ブリッジ&反動スプリング

身体前面の柔軟性と全身のパワーを高める

【準備】

補助者と肩越しに手をつなぎ、背を向けて立つ。

【 1 】

足の位置を変えずに膝を前に出すようにしてブリッジする。

撮影協力(左)長谷川恒平選手、(右)松永共広選手

 

【 2 】

すばやくからだを起こす。
【1】【2】を繰り返す。

 

10回 × 3セット

5:連続ブリッジ

全身のコントロール能力(調整力)とパワーを高める

【準備】

床に四つんばいになった補助者を腹側から両手でつかむ。

【 1 】

手を離さないように前転しブリッジする。

【 2 】

そのまま床を蹴ってすばやく後方返りで
【1】へ戻る。
【1】【2】を繰り返す。

 

10回 × 3セット