食事

1. トレーニング時の食事のコツ

たんぱく質、補食、そして食事のタイミング

たんぱく質をしっかりとる

 トレーニング時には、筋肉のおもな成分であるたんぱく質を不足しないようにとることが大切です。食事では、主菜を欠かさず食べましょう。そして、食事や補食(下記参照)で牛乳や乳製品をとりましょう。

たんぱく質を多く含む食品

エネルギーが不足すると体たんぱく質が分解されるため(図1)、たんぱく質(主菜)だけでなく、炭水化物(主食)をしっかり食べることも重要です。

図1 体内のグリコーゲン貯蔵量が多いとき、運動時の体たんぱく質の分解は少ない

Lemon PW and Mullin JP @1980

グリコーゲンは、炭水化物の摂取により体内でつくられるおもなエネルギー物質。
体内のグリコーゲン貯蔵量が少ない状態で運動を行うと、体たんぱく質の分解が多くなると考えられている。

 

補食をうまく利用しよう

 食事だけでは必要なエネルギーや栄養素がとれないことがあります。運動前または直後に炭水化物とたんぱく質を含む食品を補食としてとりましょう。

補食の例

組み合わせ例: ロールパンと牛乳、おにぎりとヨーグルト、バナナと牛乳

運動直前に、甘いものをたくさん食べると低血糖を招くことがあるので、控え目にしましょう。食べすぎにも注意。
運動後すぐに食事がとれる場合は、補食はとらなくてよいでしょう。

トレーニングと食事のタイミング(図2)

  • 空腹でトレーニングをしない。
  • トレーニング後なるべく早く食事をとりましょう。
  • トレーニング後すぐに食事がとれない場合は補食をとりましょう。

図2 朝練習があり、練習開始時刻が17:00の場合のタイムスケジュール例

 

2. 計量後から試合までの食事(当日計量編)

当日計量から試合までのリカバリー

 これまで、ジュニアからシニアの多くの試合の計量は試合前日に行われることが多かったため、試合の1 週間〜数日間で減量を行い、計量後に食事と水分を十分にとって試合にのぞむ選手もいました。しかし、試合当日朝に計量がある場合は、計量後から試合開始までの時間が短く十分に食事をとることができません。減量を行うと脱水が起こったり筋肉のエネルギー源であるグリコーゲン(糖質の一種)が減少したりし、コンディションが悪化します。

 そのため、日ごろから体重を管理し、試合直前に食事を抜いたり主食を抜くなどして急激な減量をしないことが重要です。試合前日も食事をとれるくらい余裕をもって体重調整するのが望ましいでしょう。また、計量に向けて減量した選手や試合前日の食事が少なかった選手は試合までに水分をよくとり、消化のよい炭水化物源となる食品を十分にとってグリコーゲンを回復させましょう。

当日計量の試合での食べ方(例)

  • できるだけ普段通りに食べる
  • 炭水化物の多い食品と脂質の少ないおかずを組み合わせる
  • おかゆ、おじや、うどん、ごはん、おにぎり、あんぱん、ジャムパン、食パン、カステラ、エネルギーゼリー、あめ、グミなどの消化のよい炭水化物源
  • バナナ、フルーツ缶、オレンジジュースなどの消化吸収の早い果物や果汁100%ジュース
  • 味噌汁、スープ、スポーツドリンクなどの塩分を含むスープや飲料

※食べるものやタイミングは計量後から試合までの時間を考えて計画的にとりましょう

参考資料: Wright HH and Garthe I, Weight category sports, Maughan RJ ed, Sports nutrition, pp 639-651 (2014) Reale R et al. Eur J Sport Sci, 17 (6): 727-740 (2017)

 

3. ジュニア期の『食』

食の大切さを考えよう

ジュニア期の『食』

 『食』という文字を分解してみると、「人に良い」という文字に見えませんか? 私たちにとってよいこと、『食』の大切さをいっしょに考えてみましょう。

いただきます♪
ごちそうさまでした☆

 みなさんは、毎日のごはんを食べる前に「いただきます」、そして食べおわったら「ごちそうさま」といっていますよね。「いただきます」も「ごちそうさま」も『いのち』あるものを私たちのからだの材料として食べること、そしてその材料を使っておいしい料理をつくってくれた人への2 つのことにたいする“ありがとう”という気持ちをあらわす言葉なのです。このことは世界のなかでもめずらしいことで、大切にしていきたい毎日の習慣です。

ジュニア期と食べること

 私たちがごはんを食べる理由として、毎日の生活に必要な頭とからだを動かすためのエネルギーをとることや骨や筋肉など、からだをつくること、おいしいものを食べることで、おなかも気持ちも満足することなどがあります。さらに、小学校5 〜6 年生からは、一生のうちで最も心やからだが成長する時期のはじまりといわれています。身長が急にのびたり、内臓や骨、筋肉など、レスリングに必要な体力や運動能力にかかわる機能が大きく発達しはじめます。

 ジュニア期にバランスのよいごはんを食べてからだを動かすことは、レスリングを強くするためであることはもちろん、ずっと長く元気で丈夫なこころとからだをつくるために大切なことなのです。

 

朝ごはん

 みなさんは、朝ごはんの大切さを知っていますか?

 朝起きたときには、みなさんの頭とからだを動かすためのエネルギーがほとんどなくなっています。そのまま朝ごはんを食べないで学校に行くと、頭に栄養が運ばれていないので、やる気がなくなったり、ぼんやりしたり、おこりっぽくなったりすることもあります。

 朝ごはんを食べると→頭とからだがよくはたらいて→元気に勉強や運動ができる→早くグッスリねむれる→早く目がさめる→早起きすると朝ごはんがおいしい→生活のリズムができて、元気で気持ちよく毎日をすごすことができます。つまり、朝ごはんは『こころの栄養』でもあるのですね。

指導者・保護者の皆様へ

 成長期の食事はレスリングというスポーツはもちろん、お子さんの生涯の健康への影響が大きく、とても大切な時期となります。現在、食品については多くの情報があふれ、美味しそうな誘惑に満ちていますが、これさえとっていれば大丈夫、といった「魔法のような食品」はありません。『食事のバランス』が一番の基本となります。子どもや私たち成人にとっても、何をどれくらい食べるのか具体的な食事の内容については、食事バランスガイド(厚生労働省・農林水産省:http://www.j-balanceguide.com/)を参考にしましょう。

 また、下記のホームページはお子さんといっしょにご覧いただける内容が多く、ご参考になれば幸いです。

早ね・早おき・朝ごはん全国協議会

首相官邸 キッズルーム「もうごはん食べた?」

日本医師会 キッズクラブ「たべるのはてな?」

日本栄養士会「あなたの・みんなの食育」

文部科学省「子どもの体力向上」

4. 保護者のための食事講座

あなたも子どもの“食事コーチ”

 成長期は適切な食習慣を完成させる時期です。そのためには、保護者の方々に生活習慣(生活面)を含めた食環境を整える“コーチ役”をお願いします。

「基本的な食事の形」(P.33)の食事を毎日3回食べる

◆ 夜遅くまで起きている人は、朝食を抜く傾向にある(生活習慣)

「おやつ」は3 食ではとりきれない栄養を補う重要な食事である

◆ 冷蔵庫には乳製品と果汁100%ジュース(オレンジ、グレープフルーツ等)を常備する

◆ 減量中にはおかず類の食材選びと調理方法の工夫で「脂肪」の量を減らす

材料選びが明暗を分ける

同じ食材でも、部位によって脂肪量に差がある

調理方法とエネルギー

同じ食材でも調理方法によって脂肪量に差がある

女子栄養大学出版部「家庭のおかずのカロリーガイドブック」より