ドーピング
1. 薬物に頼らないからだづくり
ドーピングについて基礎知識Q & A
1 : ドーピングとは何ですか?
ドーピングとは、薬などを本来の目的とはちがった使い方をして、自分の筋肉の量をふやしたり(筋肉増強作用)、試合前の自分の気持ちを無理に高めようとしたり(興奮作用)、試合前に尿をたくさん出して(利尿作用)、無理な減量をしたりすることです。
2 : ドーピングはどうしていけないの?
薬の本来の目的とはちがった使い方をするために、薬の副作用も出やすくなり、自分の健康にも害となります。ドーピングは自分のからだに悪いだけでなく、正々堂々と勝負するスポーツ本来の目的にも反することです。
3 : ドーピング検査とは?
ドーピング検査は尿や血液を採取し、公認の分析機関で禁止物質が含まれているかどうかを調べます。ドーピング検査には“競技会検査”(試合後に行われる検査)と“競技会外検査”(練習中などに行われる検査)があります。
4 : ドーピング検査はどのように行われますか?
競技会検査について
検査を受けることになると、試合後に検査があることを告げられます。検査室に行ってs受付をすませ、トイレで係員立会いのもとに尿を採取します。採取した尿を2つの検体容器(A・B)に自分で移し、封印します。検査用紙には、7日以内に使用した薬やサプリメントを記入する欄があります。内容と手続きに問題がなければサインをして終了です。
自分がフェアであることを証明する検査です。検査対象者に選ばれたら、自信をもって堂々と受けてください。
5 : ドーピング違反とは?
検査で禁止物質が検出される場合だけでなく、検査を受けなかったり、逃げてしまっても違反とみなされます。
6 : どんな薬を使用してはいけないの?
市販されているかぜ薬や鼻炎の薬に禁止物質(興奮作用のある薬)が含まれることがあるので気をつけてください。葛かっこんとう根湯などの漢方薬、胃薬などにも禁止物質が含まれているものがあります。
サプリメントや滋養強壮剤・強精剤にも禁止物質(筋肉増強作用のある薬)が含まれているものがあります。
禁止物質に関しては、日本アンチ・ドーピング機構(JADA)や日本体育協会のホームページを参考にしてください。
7 : かぜのときはどうすればいいですか?
禁止物質を含まない薬がありますから、症状に応じて医師から処方してもらいましょう。
8 : 検査で陽性になったらどうなりますか?
試合の成績や結果を失い、試合の参加資格を失います。選手以外で違反に関与した人たちにも制裁が課せられることがあります。
9 : 病気やケガの治療に禁止物質が必要な場合は?
所定の用紙(TUE申請書)に資料をそえて申請すると審査のうえで許可がおりる場合もありますから、担当の医師とよく相談してください。
ドーピングに関してわからないことは、日本レスリング協会スポーツ医科学委員会に遠慮なくお問い合わせてください。
2. ドーピング検査についての最新情報
ロシアでの組織的なドーピング疑惑およびオリンピックメダリストのドーピング発覚などを受け、世界中でドーピング検査の件数が増加しています。2014年の1年間にレスリング選手に対して行われたドーピング検査は、世界中で5,154件、日本国内で167件でした。カデット世代(15 〜17歳)の選手に対してもドーピング検査が行われています。ドーピング検査には競技会だけではなく競技会外の検査がありますが、2014年の1 年間に日本国内でレスリング選手に対して行われた競技会外検査は48件でした。
国民体育大会や、ナショナルトレーニングセンター(NTC)での合宿中に、今までドーピング検査を受けたことがなかった選手に対して予告なしに検査員がたずねてきてドーピング検査が行われることもあります。今までドーピング検査を受けたことがない選手も、ドーピング違反とならないように、アンチ・ドーピング(ドーピングが起こらないようにする方法)の知識を持つことが必要となっています。
競技会検査 | 大会要項に「ドーピングコントロールを実施する」「ドーピング検査対象大会である」などが書かれてある競技会に出場するすべての選手は、競技会検査を受ける可能性があります。 |
競技会外検査 |
世界レスリング連合(UWW)または日本アンチ・ドーピング機構(JADA)が設定した登録検査対象リストにのった選手は常に競技会外検査の対象となります。 国民体育大会に出場する選手は、開催県入りしてから参加予定の競技会終了までの期間に競技会外検査を受ける可能性があります。 |
アンチ・ドーピングについて学ぶ方法
日本アンチ・ドーピング機構(JADA)のホームページ にはさまざまな教材・最新情報があります。
日本レスリング協会では、JADAが作成した「アンチ・ドーピングガイドブック Play TrueBook」を配布しています。
JOC杯ジュニアオリンピックカップの会場内などで学ぶ機会を提供しています(JADAアウトリーチプログラム)
ナショナルチームや各世代代表選手の合宿中にアンチ・ドーピング講習会を行っています。
3. 禁止物質・方法に関する最新情報
禁止物質・方法は世界アンチ・ドーピング規定(WADA code)で決められていて、毎年1月1日に改訂されます。特に注意すべき事項を、2017年度版の世界アンチ・ドーピング規定でまとめました。2019年1月1日には2019年度版に改訂されますので、最新情報を入手する必要があります。
ケガや病気のときはどうすればよいか?
ドーピング検査を受ける可能性があることを、医師・薬剤師に伝えましょう。
糖質コルチコイド(ステロイド系抗炎症薬)という物質は、局所注射などの局所使用は禁止されませんが、医療記録の保管が必要です。
喘息の治療は、使用可能な薬と、TUE申請という手続きを行い審査のうえで許可が出ないと使用できない薬(メプチンエアー、ホクナリンテープなど)があります。
低身長に対する成長ホルモン、めまい・メニエール病に対する利尿剤などは、TUE申請を行い審査のうえで許可が出ないと使用できません。
注意すべき市販薬・サプリメントは?
「かぜ薬」「鼻炎薬」「せき止め」「のど飴」の中には、禁止物質が入っているものがあります。
漢方薬・生薬には、禁止物質が入っているものがあります。
栄養補助食品、サプリメント、ドリンク剤の中には、禁止物質が入っているものがあります。特に海外製のものは、禁止物質が入っている製品が少なくありません。
薬・サプリメントを使用してよいか確認するには?
スポーツファーマシスト(薬の専門家) に問い合わせましょう。
Global DRO JAPAN(アスリートを守る薬の検索サイト) で自分でチェックできます。