こころ構え
1. レスラーのこころ構え
強いこころって何だろう?
みなさんは、試合直前の自分のこころの状態について考えたことがありますか? 思い出してみましょう。
「ドキドキする」「ワクワクする」「勝つぞ!」「勝てるかなぁ」などなど。試合前になると、人それぞれ気持ちが動きます。どんな気持ちのときに勝てるのでしょうか? あるいは負けるのでしょうか?
試合のときだけはありません。毎日の練習のときも、気持ちはさまざまです。「はやく練習したい!」というやる気に満ちあふれているときもあれば、「今日は体調が悪いから、やりたくないなぁ」といった消極的な気持ちのときもあります。消極的な気持ちのときに練習をするとどんなことになるでしょうか?
また、試合や練習以外の時間のことも考えてみましょう。練習の行き帰り、学校の時間、家庭での時間などに、レスラーとしてこころにとどめておきたいことはどんなことですか?
ここでは、強くたくましいレスラーのこころ構えについて考えてみましょう。どのようにしたらこころの強いレスラーになることができるのかについて、ヒントが書かれています。しっかり読んで、こころを鍛えましょう。
2. 目標を立てよう!
何をしたいのか、どうそれを達成するか
目標を掲げて試合にのぞむことは当然ですね。みなさんは、どんな目標を掲げていますか?
目標を掲げたほうが、レスリングに対するやる気も出てきます。また達成の度合いを確認することで、そのときの自分の実力や、次のレベルへの課題などが、はっきりとしてきます。
目標を掲げることはとても簡単なように思えますが、目標の立て方を間違うと、ただ単に目標を掲げただけで終わってしまいます。自分が何をしたいのか、そしてそれをどのように達成していくのかを明確にする正しい目標の立て方を身につけましょう。
●目標設定の原則- 結果(勝った、負けた)ではなく、内容(タックル、グラウンド、投げなど)についての目標を設定する。
- 努力すればできそうで挑戦的な目標を設定する。
- 具体的な目標を設定する。
- 長期目標だけでなく、短期的な目標(技術、体力など)も設定する。
3. リラクセーション
ちょうどよいこころの状態をつくる呼吸法
大事な試合のとき、あなたは緊張しますか? それとも熱くなり、やや興奮状態になりますか?
試合にのぞむには、ある程度の緊張感と気持ちの高ぶりが必要となります。その緊張と興奮の程度には個人差があります。つまり、ひとりひとりにちょうどよいこころの状態があります。
ちょうどよいこころの状態をつくるには、まずその基本として、自分自身のリラックスした状態が、どのような状態であるのかを理解しておかないといけません。
ここでは、基本的なリラックスの仕方、リラクセーション技法について紹介します。
ポイント:息を吐き出すときのからだの感覚を味わう(筋肉がゆるんでいく感じなど)
第1段階:おなかの底から横おうかくまく隔膜を突きあげるように深く息を吸い込み、2 〜3秒間息をとめ(ポーズ)、ゆっくり吐き出す。おなかに手をあてて、おなかの動きを確認しながらでもよい。
第2段階:息を吐き出す時間を長めにとる。この段階では、吐く段階を無理して極端に長くとる必要はない。
第3段階:吐き出す段階を3 期に区切って、吐き出す息を3 分の1 ずつ吐き出すように練習する。
4. あこがれの選手から学ぼう
あこがれの選手に近づくために
みなさんがあこがれる選手や尊敬する選手を想像してください。
●試合のときの様子はどうですか?
- 冷静な表情をしていますか?
- 闘志あふれる振る舞いですか?
- 冷静な選手は、どんな工夫をしているのでしょうか?
●普段はどんな様子でしょうか?
- 人と出会ったときには、気持ちのいいあいさつをしていませんか?
- 練習の道具を準備したり、後片づけをしたりなど、自分から率先して行ってはいないでしょうか?
みなさんのあこがれる選手は、試合のときは当然ながら普段の態度でも一流の選手なのだと思います。
最後に、みなさんのあこがれる選手がどんなことをしているのか観察しましょう。あるいは想像しましょう。
「どんな人柄なのか?」「あいさつはできるかな?」「試合のときはどんなことをしてるかな?」「普段はどんな生活をしているのかな?」など。いろいろ想像しましょう。
そして、あこがれの選手に近づくためにはどんなことをしたらよいか考えてみましょう。「練習のときにこころに留めておくことは?」「普段からこころがけることは?」などいろいろ考えてみましょう。
5. 自分の将来を考える
アスリートのキャリア設計
『ジュニアのためのレスリングブック』を読んでいるみなさんは、レスリングの競技者として高い競技成績を収めることを目標に練習に打ち込んでいると思います。それでは、自分自身の人生の目標について考えたことはあるでしょうか。
「アスリートとしての目標」と「人生の目標」とは似ているようですが異なります。アスリートとしての目標は短期・中期的な目標であり、人生の目標は、より長期的な目標になるでしょう。みなさんが、競技を引退した後も生涯を豊かに生き、社会のモデルとなることは、競技者として成功すること以上に重要なことです。そのためには、アスリートとしての目標に向かう間にも将来ありたい自分を実現させるための準備を行うことも大切です。
○アスリートのキャリア問題
アスリートとしての競技生活にはいつか終わりが訪れます。高校や大学等への進学といったキャリア移行を含めて生涯の目標達成に向けたビジョンをもつことが重要になります。
アスリートの生涯の設計は、アスリート自身だけでなく、コーチや家族をはじめとするアスリートの周りの人間すべてが考えなければならない課題です。